※記事内に商品プロモーションを含む場合があります
ゾウリムシの長期培養とその考察
ゾウリムシを長い間培養する時、植え継ぎ忘れや
培養が失敗してしまう事があると思います。
これは、バックアップや予備の株を別に培養しておけば防げます。
ただ、ゾウリムシの老化・寿命で死ぬ場合は、防げません。
私は2020年に採取した株を、4年間培養していますが
培養中に、うまく世代交代出来ている様です。
どうすれば、ゾウリムシの世代交代が起こり
寿命でゾウリムシが全滅する事が無いか?
を考察していきたいと思います。
ゾウリムシの寿命
昔、ゾウリムシには寿命は無いとされ、
寿命で死ぬことは無いと言われていました。
1950年代に、ソネボーンが毎⽇継代培養法という方法を使い
ゾウリムシにも寿命がある事を突き止めました。
ゾウリムシ(Paramecium Caudatum)の場合、約700回分裂すると
寿命を迎えると言われています。
8時間に1回分裂するので、餌が豊富な場合では、約7~8ヶ月で死にます。
ゾウリムシの世代交代の仕組み
ゾウリムシには以下の様な世代交代の仕組みがあります。
接合
接合型の異なるゾウリムシが2匹、接着した状態になり
核の交換を行う事で、世代交代が生じます。
ゾウリムシには性別に相当する型が大きく分けるとO型とE型の2種類あり、
O型とE型の違う型でのみ接合が発生します。
同じ型しかいない培養液では、人為的に誘導しないかぎり
接合は発生しません。
接合が発生する条件
・接合型の異なるゾウリムシが存在する
・適度な飢餓状態
適度な飢餓状態になると、凝集が発生して
その中から、接合対が発生します。
接合が開始すると、小核の減数分裂と
旧・大核の消失が発生します。
減数分裂した小核のコピーを接合相手と交換し
相手の小核と自身の小核を受精させる事で
接合自体は終了します。
約13時間で終わります。
その後は、受精して出来た、新生・小核から
大核が作られ、世代交代が完了です。
接合後のゾウリムシは未熟期間となり
約50回分裂を行うまでは、接合が発生することはありません。
ゾウリムシの接合は、寿命の前半には発生しやすいですが
寿命の後半になると、稔性が低くなり、接合は発生しずらくなります。
接合型変換
ゾウリムシには性別に相当する、接合型がありますが、
その接合型が変換、人間で言う性転換する仕組みが
ゾウリムシにはあります。
条件は、過度な飢餓状態と言われていて
飢餓状態が3日以上経過すると、発生しやすくなります。
実際に、私が培養している株でも、最初は1匹から培養を開始しましたが
何回か植え継ぎした後に、接合対を観察しました。
オートガミー
接合は自身の核を減数分裂し、接合相手の減数分裂した核を交換し
相手と自身の核を受精する事で行います。
オートガミー(autogamy)が自身の核を減数分裂を行い、新生の核とします。
減数分裂が発生しているので、遺伝子の変化ありますが、変化は少ないです。
ただし、ゾウリムシ(Paramecium Caudatum)ではオートガミーは
薬品などで誘導すれば発生する様ですが、自然の状態では発生しません。
他のゾウリムシ、Paramecium tetraureliaやParamecium aurelia
などの種類では発生する様です。
また、接合とは違い見た目では分からないので、オートガミーが
起こっているか確認する場合には、核染色をして
大核の崩壊が発生しているかどうかで、判断出来ます。
大核再生(MR)
通常、元の大核は接合が始まると退化消失し、接合して出来た新生・小核より
新生・大核が作られます。
大核再生は、条件により元の大核の破片が再生し、
新生・大核が作られなくなる現象です。
この場合、大核が元の大核なので、ゾウリムシの寿命は
元通りとなり、接合しても世代交代にはなりません。
大核再生は、餌が豊富にある状態で、発生しやすいので、
接合完了後48時間は、飢餓状態で置いておく必要があります。
よって、餌の追加や、培養液への移動は、48時間経過後に行う様にします。
培養している株で気をつけている事
現在培養している株も、最初は1匹でした。
途中接合対を見つけてから、接合対を取り出して培養。
これにより接合型を、より均一化します。
均一化する事で、接合対が発生しやすくなり
ゾウリムシの世代交代が発生しやすくなり、寿命による死を回避できます。
ただし、接合対だけを取り出して培養する方法は失敗しやすいので
次世代の接合対を確認できるまでは、元の株は取っておいた方が良いです。
ゾウリムシの植え継ぎ時は、元のゾウリムシの密度は高めにしています。
植え継ぎ時、元のゾウリムシの密度を高めにする事で
O型、E型、両方の接合型が含まれる確率を上げます。
また、植え継ぎの密度が高めだと、2~3日で飢餓状態になり、
接合が発生しやすくなり、1週間で植え継ぎを行うと、飢餓状態が4日以上
あるので、接合型に偏りがある場合は、接合型変換が起きやすくなります。
より密度が高いと、朝に植え継ぎを行った場合
翌日の夜に接合対が観察できます。
2~3日で接合が発生した場合、次の植え継ぎまで餌が無い状態になるので
接合後の、大核再生を起きにくくなります。
また、エビオス錠で培養し、1週間で植え継ぎを行います。
定期的に植え継ぎを行う事で、定期的に接合対が発生するので
より世代交代が発生しやすくなります。